名作文学 12
社会が何らかのクライシス(危機)に直面したとき、過去の歴史の中に同パターンのクライシスを探し出して復権させるという発想は、近世の野史・俗史の常とうでした。
この小説は、平成のいまのクライシスと見事一対一で対応するのであり、いま読まれてこそ、大きな説得力をもつのです。
その意味では、逆に、早く書かれすぎた不運の大作とも言えるでしょうか。
「流雲の賦」は単行本(中央公論社、上下二冊、昭和50年)として刊行されました。
石動山合戦を扱った古典文学には、「太平記」「(甫庵)太閤記」「荒山合戦記」等があり、特に「荒山合戦記」は数多い戦国軍記の中では屈指の佳編。
おそらくは前田氏側の手になるものでしょう。
歴史学・歴史考古学の側の石動山研究は急速にすすみ相当数の論考があり、「鹿島町史石動山資料編」(61年)の文献目録が最もくわしいです。