« 2010年09月 | メイン | 2010年11月 »

2010年10月 アーカイブ

名作文学 4

由吉自身は、自分を閉じこめる深い雪の音に聴き入りながら「唐突として、暗い海底を這いまわる一匹の蟹を思い浮べ」ています。


そして「広々とうねる海の底の一画で、海の広さも知らず、蟹は鈍い感覚を身のまわりにひろげて、餌を求めて重い甲羅をひきずりまわっている。


しかしみぞれ雪が暗くわきかえるにつれ、海が荒いうねりを立てるにつれ、甲殻の内側では白い肉がいよいよ豊かに育っていき、卵巣がいよいよ鮮やかな紅を育てていく…。」


つまり題名通り、深い雪の中に、個の意識という重い甲羅を引きずり、ついにそこから一歩も出ることができない・・・


そういうわれわれの残酷な生の形を、そこに彼が垣間見ていたことはまず明らかでしょう。


だからまた「もわもわと轟めきあって落ちてくる」その激しいものの向こうに、改めて日常を超えることの意味を、はっきりとつかみ取ることができたのです。


これは明らかに金沢での豪雪体験がなかったら決して手に入らない思想ではなかったでしょうか。


由吉の文壇登場は昭和46年、小説「杳子」の芥川賞受賞によってです。


そこには「他者を求めながら他者を感じることができない孤絶の苦しみ」が見られるとされ、当時からいわば現代人の断絶の構造に迫る注目の作家として、その評価は高いです。


小川国夫、黒井千次、後藤明生、あるいは高橋たか子、津島佑子らとともに、いわゆる「内向の世代」を代表するひとりでもあります。


先の昭和61年からは、芥川賞選考委員としても活躍しています。

名作文学 5

今回紹介するのは、坪野哲久歌集の『北の人』です。

「戦前のある日、私ども一家が度重なる苦をなめたところの目白坂上の茅屋に、能登のくにから上京した哲久の父が、そのなつかしい老顔をあらわした」


「夜の憩いのひとときのこと、父は三十なかばの哲久に向って、しずかな語調でこう言った。


『五十年まで辛抱さっしゃい。どうにかなるわいの…』」(昭和53年/山田あき『碧巌』)。


この歌人としても著名な坪野哲久の妻の言に、はっと思い浮かぶことばがあります。


哲久と同じく能登に生まれた加能作次郎が、その娘の結婚に当たってはなむけに色紙に書いたということばです。


「人は誰でもその生涯の中に一度位自分で自分を幸福に思う時期を持つものである」。


全く同じといっていいことばではないでしょうか。


「五十年まで辛抱さっしゃい。どうにかなるわいの…」


哲久(昭和63年没、82歳)が生まれた能登高浜(志賀町)は、半島の西、外浦にあります。


したがって内浦と違い、始終荒波で、それだけに冬はどんなにつらい少年時代を送ったかと思われるのです。

About

2010年10月にブログ「万能ソース」に投稿されたすべてのエントリです。新しい順に並んでいます。

前のアーカイブは2010年09月です。

次のアーカイブは2010年11月です。

他にも多くのエントリがあります。メインページアーカイブページも見てください。

管理人のお気に入り

包茎 福岡

福岡で包茎・カントン包茎・仮性包茎・真性包茎・包茎手術や治療、亀頭増大、コンジロームなどの性病治療を行うなら包茎・増大・長茎治療専門メンズクリニックの小倉スキンケアクリニック。九州各県や山口県・大分県の方もご来院いただいております。

ちょうちん

オリジナル提灯の製作は提灯(ちょうちん)の専門工場にお任せ下さい。価格・品質に自身があります。

ハンガー
ハンガーの企画・製造・販売会社TAYAのサイトです。製造メーカーの株式会社タヤが付加価値をもった、オリジナルハンガーをご提案します。ご要望(デザイン・機能)をご連絡ください。国内生産で小ロット・短納期に対応いたします。
  • ガーデニング用品
  • 園芸用品、ガーデニング用品、農業資材、包装資材などを幅広い商品を取り扱っております。元祖、農家の店カクヤスでは農業、農園、家庭菜園をされている方々を応援しております。
愛知 引越

栄光社は生活物流におけるお客様満足の追求と豊かな環境の育成を永遠のテーマと致します。

茅ヶ崎 賃貸

湘南エリア(藤沢・辻堂・茅ヶ崎・鎌倉)の不動産売買・賃貸情報!湘南の売買・賃貸物件はお任せ下さい。